昔の大学受験参考書を展示する私設博物館です。
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収蔵品番号352 現代文の攻略法 2012年 08月 21日
【著者】霜栄 【肩書】駿台予備学校講師 【出版社】旺文社 【サイズ】変形A5 【ページ数】239頁 【目次】 はじめに ポイント一覧 本書の利用法 空欄補充の問題を攻略する…………………………1日目 問題[一]加藤周一「近代日本の文明史的位置」…東洋大学 ステップ1 接続語を入れる ステップ2 抽象語を入れる まとめのページ Q&A「なぜ点数が上下するのですか?」 抜き出し・脱文挿入を攻略する………………………2日目 問題[二]加藤周一「狂気の中の正気」…神戸大学 ステップ1 部分を抜き出す ステップ2 脱文を挿入する まとめのページ Q&A「どうすれば文章を速く読めますか?」 指示語・傍線説明を攻略する…………………………3日目 問題[三]平川祐弘「和魂洋才の系譜」…九州大学 ステップ1 指示語の内容を答える ステップ2 傍線内容を説明する まとめのページ Q&A「どうすれば難しい評論が読めますか?」 比喩・内容一致問題を攻略する………………………4日目 問題[四]真木悠介「交響するコミューン」…成城大学 ステップ1 比喩の意味を見抜く ステップ2 選択肢の意味を見抜く まとめのページ Q&A「どうすれば選択肢に強くなれますか?」 段落・主旨判定を攻略する……………………………5日目 問題[五]林 達夫「思想の運命」…立命館大学 ステップ1 意味段落に分ける ステップ2 主旨を判定する まとめのページ Q&A「どうすれば成績が上がるのですか?」 表題・正誤判別問題を攻略する………………………6日目 問題[六]佐々木邦「人生エンマ帳」…成蹊大字 ステップ1 全体にタイトルをつける ステップ2 全体から正誤を判断する まとめのページ Q&A「どうすれば難しい設問が解けるのですか?」 センター試験〈評論〉を攻略する………………………7日目 問題[七]中村雄二郎「哲学の現在」…共通一次 ステップ1 部分を正しく解釈する ステップ2 全体を正しく把握する まとめのページ Q&A「センター国語で高得点を取るためには?」 センター試験〈小説〉を攻略する………………………8日目 問題[八]岡本かの子「鮨」…センター試行 ステップ1 語句の解釈を行う ステップ2 心情の把握を行う まとめのページ Q&A「小説の問題に強くなるためには?」 記述・要約〈評論〉を攻略する…………………………9日目 問題[九]堀田善衛「美しきもの見し人は」…東京大学 ステップ1 傍線の内容を記述する ステップ2 本文の要旨をまとめる まとめのページ Q&A「記述に強くなるためには?」 記述「作文〈随筆〉を攻略する………………………10日目 問題[十]柳田国男「妖怪学談義」…字都営大学 ステップ1 傍線の内容を記述する ステップ2 自分の意見を述べる まとめのページ Q&A「作文・小論文に強くなるためには?」 【初版発行年月日】2000年9月30日 【収蔵品発行年月日】2003年 重版発行 【収蔵品定価】1100円 【入手困難度】★★☆☆☆ 【学力貢献度】★☆☆☆☆ 【ヤフオク相場】350円~ 【鑑定額】105円 【代替参考書】霜栄「現代文読解力の開発講座」(駿台文庫) 【コメント】 旺文社のDoシリーズは、理科の参考書は全て改訂版が出ているが、その他の教科は皆この黄色い版だけで打ち止めになってしまっている。中でも本書は特殊なサイズなので雑誌のコーナーに紛れ込んでいることが多くあまり見かけない。 駿台の霜栄師といえば今や駿台国語科の大看板だが、以前「駿台式!本当の勉強力」を読んだ時からどうも言葉の端々がカンに触って内容がスンナリと腑に落ちない。だから、本書を読むとドッと疲れるし、所々トンチンカンな屁理屈を押しつけられるのにも辟易する。 たとえば、1日目のポイント1から問題の解き方にイチャモンを付けられる。 先に設問を見るか、それともまず本文を読むか。続くポイント2でもこうこき下ろす。 またきっと、こんな人もいるだろう。読みながら解くという中間派だ。傍線や空欄がでてきたら、そこで設問を解くというやり方。確かにちょっと、要領よさげだ。やさしい問題、つまり直前部や同じ段落の読解だけで解ける設問に対しては有効だろう。たが、入試問題のレヴェルが高いときには無理。配点が高くて差のつくような設問や難関大学の設問の多くは、たぶんうまく解けないだろう。こんな思い込みだけで根拠も示さず半笑いの断定口調で決めつけるのと堀木師の理屈とどちらが説得力があるだろうか(奇しくも両方旺文社から発行されているが)? では、霜師の解き方がどうなのかと言えば、本文の解説を行わずにいきなり問題を解き始める。自分が読めているのだから、読者も当然読めているということなのだろうか?しかも それじゃあ設問の解法に行こう。あくまでも設問で問われるのは本文の読解。読めていないのに解けてしまうというような解法はない。と舌の根も乾かぬウチから本文をさておいて選択肢をチェックするという。アタマ大丈夫かしらん? 問1が接続語を空欄A・F・Hに、問2が漢字2文字の熟語を空欄B・C・D・E・G・H・Iに入れるのだが(空欄は問題文の最初から順に並んでいる)、まず第1段落の空欄Aを埋めて、次は第2段落の空欄Fを埋めて、第3段落の空欄Hを埋めるという風に問1を全て解き終えてから、やおら第1段落途中の空欄Bに戻るという厳格な出題順に解こうとしている。赤本等の解答解説ならこの順しか無いだろうが、本番でこんな行ったり来たりの石頭な解き方をしていたら時間がいくらあっても足りないと思うがどうだろう? あと少し気になったのは、句読点の位置を語るのに 有名な例文では「刑事は血まみれになって逃げ出した賊を追いかけた。」(金田一春彦著『日本語』〈岩波書店〉)とか「キンタマケルナ」(作者不明)なんていうのがある。霜師は館長より年上のはずなので、つボイノリオの「金太の大冒険」は当然ご存じのはずだが、いくらこの曲の詞がラジオのリスナー投稿に基づくとは言え「作者不明」というのはつボイノリオに失礼ではないか。金田一春彦(岩波書店)は名前を挙げながらコミックソングの出典ならどうでも良いというのか(大体「金太負けるな」のどこが痛いのか・笑)。 もっとも権威付けで引用した「日本語」(岩波新書)を繙くとこの例文は、 国語学者永野賢氏のあげた例を借りると、と金田一氏が孫引きしたものの上、固有名詞が抜け落ちてしまっている。 他にも色々引っかかる点はあるが、致命的な誤読をしているのは87年東大文理共通1番の漢字を省いて後ろに要約を付け加えた問題[九]だ。 次の文章は、ある本の「序」である。これを読んで、後の設問に答えよ。霜師の解説はこうである。どこに見落としがあるか分かるだろうか? 整理しておこう。種明かしをする前に念のため他の参考書の模範解答と比較してみよう。霜師の解答との違いが分かるだろうか? [霜師]日本人が西欧の美に感動するには、むしろ日本人としての自然な生活感情を抑圧して西欧の伝統を勉強せねばならないから。(56字) 他の模範解答にはなくて霜師の解答にだけ余計な異物があることに気づいただろうか? 霜師の無知というか国語辞典を引く手間を惜しんだことで台無しになっただけである。 べんきょう[―きやう] 0 【勉強】霜師の解答にある「西欧の伝統を勉強する」などというのは傍線部までの本文に存在しない。筆者の表現は「正直に言って、誰しも何らかの無理をしなければならないのである。つまり、勉強、ということがどうしてもともなう。」となっており、無理をすること=強いて勉むと言っているだけで、本文において「勉強」という言葉をstudyの意で用いたことは一度もないのだ。 なぜこんなポカをしたかと言えば、次の段落に「英仏語は公式の通訳をつとめるほどに熟達して、しかも専門はインド文学で、ヒンディ語及びペルシャ系のウルドゥ語にも精通しているモスクワの女性」が出てくるからであろう。つまり、通読したが故の思い込みで「西欧の伝統の勉強」などという本文に存在しない言葉を書いて平気でいるのである(もちろん、「詳解」と「総覧」の解答も「てにをは」が少しおかしいが)。
by roudai
| 2012-08-21 00:00
| 国語
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