昔の大学受験参考書を展示する私設博物館です。
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収蔵品番号430 アルバトロス現代文 2014年 01月 14日
【著者】水野遼 【肩書】 【出版社】エール出版社 【サイズ】A5 【ページ数】214頁 【目次】 はじめに 2010年センター試験 第1問 第2問 2009年センター試験 第1問 第2問 2008年センター試験 第2問 2005年センター試験 第1問 第2問 2004年センター試験 第1問 第2問 2003年センター試験 第1問 第2問 2001年センター試験 第1問 第2問 2000年センター試験 第1問 漢字・語句の意味 あとがき 【初版発行年月日】2011年1月15日 【収蔵品発行年月日】2011年1月15日 初版第1刷発行 【収蔵品定価】本体1500円+税 【入手困難度】★☆☆☆☆ 【学力貢献度】☆☆☆☆☆ 【ヤフオク相場】750円~ 【鑑定額】105円 【代替参考書】水野遼「東大理3・文1合格の著者が教える「満点を取る! ! ! 」アルバトロス現代文 改訂3版 (エール出版社) 【コメント】 今週末はセンター試験ということでセンター試験現代文に特化した本書を取り上げてみる。 先日ある人と雑談していた折、誰が東大理3合格者の合格体験記を読みたがるのかという話になった。 東大理3に受かるということは同世代の受験生の上位100名であるというのとほぼ同じことで、何かそこに到達するための秘密のノウハウがあると凡人は思うのだが、実際に読んでみるとそもそも地頭が違いすぎて使う問題集やペースなど超人的なケースが多く(合格直後でハイになっているため話を「盛って」いる部分も多少あるだろうが) 、並の受験生では「鵜のマネをするカラス」になるのがオチで、挫折感しか味わなさそうな気がする。 理3に受かるレベルの人なら思い当たる節があるのかもしれないが、それでは出版してもせいぜい毎年100冊ずつしか売れないことになる。あのシリーズが長年続いてるということはもっと売れ続けている証明で、現実がわからない東大病の父兄がタイトル買いしているのだろう。 理3合格者であればセンター試験は9割以上取れているから当然センター国語で取りこぼしたりはしていないはずなのだが、合格体験記を読んでまともな現代文対策に出会った記憶がない。 本書の著者は福岡市出身ながらわざわざ灘中・灘高に通い東大理3に合格したという(巻末のプロフィールに理3の文字はなく、なぜか公認会計士試験合格と書かれている…単なる資格マニア?)が、現在は法律専門学校の人気講師らしいということを聞くと尚更本当に理3なの?と思ってしまう。 他の本と違い即答法がメインで消去法を補助として用いていると自称しているが、大半の問題は「この方が早い」などと言い訳をして消去法を使う羊頭狗肉ぶり。この辺がアルバトロス(アホウドリ)の由来なのだろうか。 あとは「必勝スタイル」などと言って ①本文を読みつつ、傍線部に出くわしてからしばらく読んで、設問を見る ②設問に対し、自分なりに解答する ③選択肢を見て、自分のイメージしたものにもっともよくなじむものを選ぶ などというトンチンカンな手法を掲げている点くらいか。 東大受験生なら文理を問わず記述解答を作れて当たり前だが、世の中には自分なりに解答できない受験生がゴマンといることには思いが至らないのだろう。自分のイメージした「回答」に合致する選択肢がないときは自分の解釈の下手さを棚に上げて出題者に責を負わせるあたり、今まで20年間唯我独尊で生きてきた生き様が垣間見えて、そんな人間が医者になってしまうことにうすら寒さを覚えてしまう。 14題も問題を詰め込んだために1題あたりの解説はわずか6頁程度で、本文の恣意的な抽出(なぜそこを抽出するのかは読者に分からない)と問題に難癖をつけるだけの偏った読みと、聞きかじった程度の底の浅い(無くても本文の読解には全く影響ない)知識を振り回しているため、読んでいてイライラしてくる。特に酷さが際立つのは同人誌で取り上げた2009年、2010年の問題で、出版不況とは関係なく、こんな内容を持ち込んでどこの出版社も出してくれないと巻末で筆者がぼやくのも当然と思われる(それを出版してしまうのがエール出版社なのだが・笑)。 【問題文は↓から】 2010年センター試験(河合塾) たとえば第1問の問3、 傍線部B「技術、通信、文化、広告、教育、娯楽といったいわば情報そのものを商品化する新たな資本主義の形態」とあるが、この場合、「情報そのもの」が「商品化」されるとはどういうことか。その具体的な説明として最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。に対する解説がこうなっている。 さて、ポスト産業資本主義の特徴は、傍線Bにかかりますが、「情報」が価値を持つ時代であると言うことです。この話題は2009年度の解説と重複しますので、こちらでは簡単な解説に留めますが、「情報」というのが何を意味するか。本文との関係で重要なのは次の二点です。すなわち、A情報の価値は差異にあり、労働とは無関係である BAの故に、ポスト産業資本主義は商業資本主義に回帰しているということです。自ら「価値観の多様化、相対化」という言葉を引っ張り出しながら、多様化の欠片もない選択肢を不当に出題者を貶しながら擁護する意味不明な解説。 ちなみに「役立つ本」で原センセイはどう語っているか。 ①多くの労力を必要とする工業生産物、青(産業資本主義)よりも、多くの労力を前提としない技術、ここでもうダメですね。緑(ポスト産業資本主義)は労力の多寡と関係ありませんから。選択肢の中に「情報」という言葉もないので論外。他にも知識をひけらかしたいが為だけに純真な読者に威しをかける。 「フロイトによれば~あるという」のうち「三度ほど大きな痛手を被ったことがある」という部分にまず注目です。そこでは、A地動説B進化論C無意識という3つが挙げられています。実はこの部分が何を言っているのか、それがわかるのとわからないのでは天と地ほどに差があるのです。「それがわかるのとわからないのでは天と地ほどに差がある」と言いながら、直後に「少なくとも一つを知っていなければなかなかわかりづらい」とトーンダウンしている。 原センセイはここをどう語っているかというと 過去に三度ほど大きな痛手をこうむったことがあるという。はい「三度」、数字ですね。数字が出てきたら必ず数字に○をしておく。で、「大きな痛手」、マイナスのニュアンスの言葉ですね。何か悪いこと、マイナスなことがあった。人間の自己愛は過去に三度大きな痛手をこうむったことがあると。一度目は、はい、あらかじめ「三度」と提示してその内容を展開していきます。「一度目」の横に①と書きます。必ずこの後②、③が出てくる。それがいつ出てくるのか、と予測しながら読んでいく。(中略)「しかしながら」、逆接の三角ですね。「実は」、「実は」という言葉は作者が必ず自分の主張を強調するために、相手が考えていること、知っていることをひっくり返しにかかる、その時の「決まり文句」が「実は」という言い方なのです。だから、この先を注意して読んでいきます。受験生にとってどちらの負荷が軽いかは言うまでもあるまい。 最もこの本の酷さを伝えるのは2010年の小説問題で、あまりの誤読ぶりに自分の眼を疑ってしまった。この本をヨイショしている連中は以下の記述に目が行かなかったのだろうか? これまで克久たちは、一心に練習に打ち込んできたこともあり、自分たちはある種完成の域に達しつつあるという感覚を覚えていました。しかし、世の中そんなに甘くなかった。井の中の蛙に過ぎないと痛感させられたわけです。本文からその根拠を拾っておくと、「スゴイ学校は他にいくらでもあった」とストレートに書いてありますし、他校の「硬質」な音色に圧倒されています。この「硬質」は、金管楽器の演奏の「機械的」な「無機質性」のことを言っていると解するべきでしょう。なぜなら「騎馬隊」や「精密機器」というと、号令や電気回路に応じて無機質に作動するものというイメージがありますし、宗田少年が「人間的」なものに嫌悪感を覚えていることから、その反対概念としてそう推察されます。つまり自分たちの演奏はまだ人間くさく、そのために未熟であると痛感しているのです。直接問題で問われている箇所ではないが、本文の箇所をどう読んだら筆者のようにOBの言葉が「負け惜しみ」になるのだか。灘のOBはよっぽど威張っていて下級生として苦労したのだろうと同情してしまう(爆)。そもそも「鳥の声」とは何なのか、鳥が威張っているのだろうか、意味不明である。 原センセイに解説してもらおう。 ところが、どこからか謎の台詞が出てきます。「完成されているけど、音の厚みには欠けるよ」ずいぶんと上から目線です。誰の発言か分からないまま作者は続けます。負けたという全員の感情、とりわけ一年生達の驚きを代弁した川島の一言、はい、代弁しているのだから川島も一年生ですね。ということは宗田も一年でしょう。出番を控えていた、まだ自分たちは演奏していないんですね。する前からビビッちゃった。このままじゃロクな演奏は出来ない。そしてもう一度、「完成されているけど、音の厚みには欠けるな」なぜか微妙に語尾が違いますが(笑)、ずいぶん偉そうなOBですね。たかだか高校生くらいの分際で。こういう口ばっかり達者でウザいOBいますよね。自分たちは「負けた」と思っているけど、OBは批判的な意見を言うわけです、聞こえよがしに(笑)。それが聞こえたことで多少なりとも前向きになれたのだからウザいOB様々です。 かくのごとく、文章の解釈自体がお粗末極まりなく、解法も特に秀でた点がなく、この定価の2/3で河合の過去問集が買えてしまう(ウチの同人誌なら5冊・笑)ことを考えれば金を出すに値しない駄本というのが妥当な評価だろう。 【追記】 性懲りもなく改訂3版が出たので立ち読みしてきたが、今年のセンター解説が追加されただけ。「改訂3版のまえがき」で「ネットで酷評された」と書かれているが、酷評の内容から当博物館ではなさそう。「やさしくするだけが参考書ではない」と一見正論を言っている風で、手法は全く明後日の方向なのは従来通り。 もちろん上記指摘箇所は旧来のまま。今年の解説でも「戦勝(ママ)前の昭和13年」などと立ち読みレベルで気付く誤植有り。 いつの間にか表紙に「文1合格」まで追加されて、よっぽど内容に自信がないのだろう。お金をドブに捨てたい人以外は5月に出る河合の黒本を待った方がよっぽど為になる。
by roudai
| 2014-01-14 00:00
| 国語
|
Comments(12)
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水野先生の信奉者です
at 2014-02-07 11:58
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は?あんたはその原センセイってのを信奉したいから、それに反する記述をしている水野先生の本をこき下ろしたいだけなんでしょ?信者君。
新版のはしがき読んだらわかるけど、水野先生は大学受験からは退いてるのに、出版社がどうしてもとせがむから、仕方なく筆を執ってるんだよ。受験オタクと一緒にするな。
0
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ai
at 2014-02-09 20:57
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仕方なく筆を執ったものが余りにもお粗末なので酷評されているのでしょう。
自分の名前を出して書いている以上、出版社云々は言い訳になりません。 水野先生を擁護したいお気持ちはわかりますが、 この出版物は大学受験においてお世辞にも良い本だとは私も思えません。
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tabitetu
at 2014-02-20 14:03
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roudai at 2014-02-23 21:50
>水野先生の信奉者ですさん
書き捨てでしょうから返事をするのも面倒でしたが、こういうロジカルでない生徒が信者だと言うことはよくわかりました。それとも一種の「褒め殺し」でしょうか。
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roudai at 2014-02-23 21:52
>aiさん
的確なフォローありがとうございます。私が書くと3倍くらいになってしまう内容をズバリと書いていただいて感謝しています。
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roudai at 2014-02-23 21:54
>tabitetuさん
本当に「頭のよい人」を凡人が真似してはいけませんね。私も中学受験の時にしみじみと感じました。
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Y良_bot
at 2014-08-27 02:28
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段落番号をちゃんとふったほうがいいですよね。本文の一体どこを解説しているかが、非常にわかりずらいです。まず本文読解なんですが、本文をブロック化・図式化もしくはマーキングして解説してる他書のほうが断然わかりやすいです。次に設問解説なんですが、きわめてあいまいであり、受験生が他の問題で再現することができなさそうなアドホックな解説となっております。筆者の肩書だけが立派?っということで、絶賛している人はきちんと中を確認していないのでしょう。
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roudai at 2014-09-01 23:06
>Y良_botさん
本文解説は本当に気の向いたところ(自慢話のできるところ)だけしかしてませんものね。他人の本を「アドホック」とdisる割に本人はどこまでも明確な手順を示さずにアドホックです。石原の本もそうですが、ちゃんと読めない人ほどこういう本に釣られますね。そういう意味で商売は上手なんでしょうが。
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Warriors
at 2014-11-10 04:34
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浪人生S
at 2017-03-16 18:38
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東進の林先生の教え方に似てますね。
引用文を見る限り説明はこの方より圧倒的にマシですが、「必勝スタイル」や「設問へのクレーム」は正にって感じです。
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tabitetu
at 2018-05-13 13:45
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水野遼さんは現在福岡で弁護士業をしているようです。実務をしているようですから、資格取得指導などから離れていますね。
https://www.bengo4.com/fukuoka/a_40130/g_40133/l_741841/
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roudai at 2018-06-13 11:07
>Warriorsさん
4年も放置しスミマセンね。どちらも本文の解説に重きを置いた本で、今オークションで5桁になるのが何かの冗談としか思えません。「読書百遍」系の本なので余裕のある人向け、としか言えません。 >浪人生Sさん 林修師はテキストしか見たことがないのですが、こうなんですかね?これだけ有名になりながら参考書を書かないのは商売上手ですね。有坂師の先例もありますので。 >tabitetuさん 続報ありがとうございます。弁護士なら弁護士らしく本業に邁進して欲しいですね。その内情報が風化してこの本も「幻の名著」化しそうでコワいですが。 |