昔の大学受験参考書を展示する私設博物館です。
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収蔵品番号325 現代文 満点への公式12 2012年 02月 14日
【著者】村井義應 【肩書】平成学院予備校講師 【出版社】ごま書房 【サイズ】変形新書 【ページ数】215頁 【目次】 まえがき Ⅰ 理論編―あなたは現代文を"解釈"で解こうとして、点を落としていないか (1)現代文は、満点を取って当然の科目 (2)現代文は、問題文を読むのではなく、ながめよ (3)現代文は、設問の"読み方と解釈"が命である (4)現代文は、数学のように解け Ⅱ 公式編―誰でもラクラク満点がとれる"現代文12公式" ●公式編のはじめに [公式一]「表題選択」 [公式二]「段落整序」 [公式三]「同義語選択」 [公式四]「反意語選択」 [公式五]「指示内容」 [公式六]「脱文補充」 [公式七]「要約」 [公式八]「心情分析」 [公式九]「語句補充」 [公式十]「理由説明」 [公式十一]「部分説明」 [公式十二]「接続詞補充」 Ⅲ 実践編―入試問題でわかる"現代文公式"の生かし方・高め方 ●実践編のはじめに [例題一]"公式"を最大限に生かす問題文、設問の"読み方"(青山学院大学) [例題二]小説問題こそ"公式"をフル稼働させ、満点をねらえ(立正大学) [例題三]"段落整序""記述"問題も"公式"でスンナリ解ける(京都女子大学) 【初版発行年月日】1993年3月30日 【収蔵品発行年月日】1993年3月30日 第1刷発行 【収蔵品定価】900円(本体874円) 【入手困難度】★★☆☆☆ 【学力貢献度】☆☆☆☆☆ 【ヤフオク相場】200円~ 【鑑定額】105円 【代替参考書】出口汪「システム現代文 解法公式集」(水王舎) 【コメント】 しばらく現代文の参考書を取り上げていなかったので、何か適当なものは無いかと探していたが、年明け以降忙しくて腰を落ち着けて読み込む時間が無かったのでとりあえず新書版でお茶を濁すことにする。 本書はごま書房が予備校バブル期に出していた受験参考書シリーズの一環でありながら、変形新書版から新書版へのデザイン変更時に消えてしまったある意味「幻の本」である。この機会にキチンと中身を晒しておかないと、「現代文はだれでも満点が取れる科目だ!」などという扇情的なサブタイトルが一人歩きして将来どんな被害を生むか分かったものではない。 「センター試験現代文」で満点(100点)を取る、というのは決して不可能ではない(多少の「問題運」は必要)と思うが、全称命題としての「現代文で満点を取る」というのはマークシートでも至難の業で、まして記述問題では絵空事に過ぎない。それを出来ると言い張るのは夢想家かペテン師かはたまた革命家のどれかである。残念なことに世の中にはペテン師が溢れていて、この本もその例に漏れない。現代文に「公式」と呼ぶべき「解き方」が存在することは確かだが、この本に出ている「公式」とやらは何とでも言える玉虫色の内容の上、例題選択が恣意的で意味不明なモノも多い。例えば、同義語選択の例題で挙げられた同志社大の問題を見てみよう。 設問 傍線部C「本来の都市的な世界」の説明として正しくないものを、次の選択肢から選び、その番号をマーク解答用紙の所定欄にマークしなさい。省略した本文が根拠という時点で噴飯もの(省略されたものからどうやって読み取るのか・嗤)だが、こんな出題年度も学部も出典もない例題を調べるのは時間の無駄なので、実際に本文に何が書かれていたのかを一々調査しないが、これだけの問題文しかないにしてもこの解答はおかしい。 筆者が「本来の都市的な世界」と言っているのだから字義通りに解せば「都市」が根源的に持つ、単純労働を要さない世界ということである。日々の糧を得るためだけの単純労働に時間を取られない、別の言葉で言い換えると「文化的」な生活である。 問題文が「説明として正しくないものを」(この点について全く触れていないのも不親切)となっているのだから、こういった方向性を持たない言葉が正解になる。であれば1はどこも間違っていないし、2も間違っていない。3も労働から情報にシフトしているので正しい。4は突然「物質的な素材」という実のある言葉が出てきた上に、「意味を喪失する」というマイナスの表現からして1~3とは明らかに異質な選択肢だ。素材が意味を喪失するとどうなるのか、素材でなければ加工技術なのか、本文を読んでいないので分からないがやはり異質だ。5も趣味や見識といった「文化的」な内容が重視されるということで1~3と方向性で言えば同じだ。「正しくないものを選べ」と言っている以上、5つの中で仲間はずれになるものが正解なのだから、これだけの材料から判断すれば4が正解とみるべきだろう。 記述式の解説もトンデモだ。 実例で、次の傍線部の説明について、制限字数が二十五字以内ということで検討してみましょう。 今度は出題校すら分からない短文だ。以下、このような謎の記述が続いていく。 ①傍線部から「呪術性」「持(つ)」「存在」の語句を傍線部の手がかりとして取り出す。で、キミの模範解答は何なの? どう見ても「(与えられた)本文の言葉だけを使って」解答を作ることは不可能な問題をわざわざ制限字数付きで取り上げながら(別の箇所で本文中に無い言葉を使った「みごとな」解答は点をもらえないと腐している・笑)自らの答えすら載せられないテイタラク。 まぁ、これだけの内容から強引に答えを出すとすればこんなところか。要は「呪文」と「一般的な言語」との違いを二十五字以内で書けばいいのだから、 [解答例]口にするだけで神秘的な力を発揮すると考えられたもの(二十五字) くらいだろう。 局所的には面白いアイディアもあるが参考書としての土台が貧弱なので、家庭教師のネタ元程度の内容にしかならず、受験生がこれに全面的に依拠するのは破滅への一本道でしかない。
by roudai
| 2012-02-14 00:00
| 国語
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